大判例

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東京高等裁判所 昭和46年(行ケ)104号 判決

一 前掲請求の原因のうち、本願発明につき、出願から審決の成立にいたる特許庁における手続、発明の要旨及び審決の理由に関する事実は当事者間に争いがない。

二 そこで、右審決に原告主張の取消事由があるか否かについて判断する。

本願発明がその要旨にいう重量組成の原料全体を、一たん溶融した後、その結晶化を阻止しながら、焼鈍温度以下に冷却し、次いで一次及び二次の再加熱をし、右冷却以降の工程において右原料の自己結晶化を行わせる構成をとるものであることは当事者間に争いがないが、右審決は本願発明の右結晶化の工程に関する構成についてはなんら判断するところがない。もつとも、セラミツク材料の結晶化の工程に関しては、組成物によつては核形成剤(Tio2のような)を加えなくても適当な加熱処理により自己結晶化させることができることが周知であるという説示部分があるが、その趣旨は、成立に争いのない甲第四号証(本件審決書)によつても、ただ、セラミツク材料の結晶化の工程にTio2のような核形成物質を介在させないことに新規性があるか否かについて答えたにとどまると解するのが相当であつて、これを超えて本願発明におけるセラミツク材料の結晶化の工程に関する構成全般にわたり、特許に適するか否かについて判断したものとするに足りない。

なお、参照例第一頁左欄第七行から十二行に前掲記載があることは当事者間に争いがないが、それは、成立に争いのない甲第三号証(参照例)を参酌しても、この種技術分野において望ましくないものとされている自然結晶化の発生現象について述べているにすぎないものと解するのを相当とするとともに、結晶化ガラスを製造する技術分野において被告主張のように原料溶融物の冷却による成形、一次、二次の再加熱による結晶核の生成、生長の構成をとることが周知技術であることを認めるに足る証拠はなく、前出甲第三号証によつても、参照例に開示された本願発明の構成と異る技術により原材料に核形成剤としてのTio2を介在させて冷却、二段加熱を行つて結晶化ガラスを製造した例があること、しかも、その冷却手段は焼鈍点以上において冷却するものであることが認められるだけであるから、右審決が参照例の記載事項を取上げただけでは、被告主張の論理によつて、本願発明の構成全般について、その新規性を否定したことに帰着するいわれはない。

しかるところ、本願発明がその構成により原告主張のうち、原料の優れた特性により望ましくない迅速な結晶化及び不透明化の現象を防止する厄介な方法を講じる必要がなくなる点を除くその余の作用効果を奏することは被告の認めて争わないところであり、右に除外した作用効果があることは成立に争いのない甲第五号証によつて認めることができる。

してみれば、右審決には本願発明におけるセラミツク材料の結晶化の工程に関する構成全般に対する総合的判断を遺脱し、これがため、右構成による作用効果の顕著性を看過しながら、本願発明をもつて、第一、二引用例及び周知事項から容易に発明をすることができたとして特許を受けられないものと速断した点に違法があるというべきである。

三 よつて、本件審決に違法のあることを理由に、その取消を求める原告の本訴請求を正当として認容することとする。

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